2018.12.07

SiCを用いた次世代型トランジスタ構造を開発(産業技術総合研究所)

今回開発した2タイプのSiCトレンチゲート型SJ-MOSFET

~トランジスタ効率の指標である通電時の抵抗を大幅に低減~

☆ポイント

・SiCを用いたトランジスタへの次世代構造の適用を実現し、世界最小の通電時抵抗を達成

・実使用上重要な高温特性や動特性などの性能が優れていることを実証

・電力変換システムの小型化・高効率化や新たな電力システム創出への貢献に期待

1.概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)先進パワーエレクトロニクス研究センター【研究センター長 奥村 元】SiCデバイスプロセスチーム 原田 信介 研究チーム長らは、富士電機株式会社、住友電気工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、株式会社東芝、三菱電機株式会社との共同研究で、炭化ケイ素(SiC)半導体を用いた1.2 kV耐電圧(耐圧)クラスの縦型スーパージャンクション(SJ)MOSFETを開発し、SiCトランジスタの世界最小オン抵抗を達成した。また、開発したSJ-MOSFETは、実使用上重要な高温特性や動特性に優れていることを実証した。

n型ピラーとp型ピラーの繰り返しからなるSJ構造はシリコン(Si)トランジスタではオン抵抗の低減効果が実証されているが、SiCトランジスタへの適用はSJ構造の作製が困難なため進んでいなかった。今回、産総研独自のSiCトランジスタの作製技術を応用してSJ構造を狭いピッチで制御良く形成することができた。これによりピッチが狭くオン抵抗が低いSJ構造のトレンチゲート型MOSFETが実現でき、1.2 kV耐圧クラスのSiC-MOSFETのオン抵抗を大幅に低減できた。今後SiCの適用が期待される電気自動車の電力システムの一層の小型化・高効率化や、新たな電力システムの創出への貢献が期待される。

この成果の詳細は、米国サンフランシスコで開催される国際会議IEDM 2018(IEEE International Electron Devices Meeting)にて2018年12月3日(米国太平洋標準時間)に発表された。

2.開発の社会的背景

エネルギーの有効利用を促進し低炭素社会の実現を目指していくには、電力の変換(直流・交流変換や電圧変換)や制御を担うパワーエレクトロニクス技術を進展させ、パワーエレクトロニクス電力機器を飛躍的に高効率化、小型軽量化、高機能化することが求められている。これらはパワー半導体デバイス(パワーデバイス)の性能に大きく依存するが、既存のSiパワーデバイスはSiの物性から決まる理論限界に近づきつつある。

SiCは、パワーデバイスの小型化や高効率化に有利な物性をもつため、次世代型パワーデバイスの有望な材料として期待されている。近年では、SiCパワーデバイスを搭載した機器が実用化され始め、研究フェーズはさらなる性能向上を目指して、次世代型パワーデバイス構造の開発に移行しつつある。

3.研究の経緯

産総研は、パワーエレクトロニクスをオープンイノベーション拠点TIAの戦略的研究領域の一つと位置付け、SiCパワーデバイスの量産試作ラインの整備とともに、民活型共同研究体「つくばパワーエレクトロニクスコンステレーション(TPEC)」を発足させ、SiCパワーデバイスの量産試作技術開発に関する共同研究を推進してきた。これまで、富士電機株式会社との共同研究で、プレーナーゲート型MOSFETのIE-MOSFETとトレンチゲート型MOSFETのIE-UMOSFETを開発し量産試作を実証してきた。住友電気工業株式会社との共同研究では、住友電気工業株式会社が開発したトレンチゲート型MOSFETであるVMOSFETの量産試作を実証してきた。

今回、ハイブリッド電気自動車/電気自動車の電力変換システムでの使用が期待される1.2 kV耐圧クラスデバイスの超低オン抵抗化を目指し、トレンチゲート型SJ-MOSFETの開発に富士電機株式会社、住友電気工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、株式会社東芝、三菱電機株式会社とともに取り組んだ。