2018.12.03

東北大学発ベンチャー「スピンセンシングファクトリー株式会社」設立(科学技術振興機構)

磁気センサーが測定可能なさまざまな物理量

~世界初の小型・軽量で超高感度な磁気センサーを開発、提供。高度医療診断からインフラの監視まで~

☆ポイント

・東北大学創立以来世界をリードしてきた磁石研究から生まれた技術による起業。

・工学研究科で開発された小型・軽量でかつ超高感度の磁気センサー技術。

・医学系研究科で培われた脳診断技術が磁気センサー技術と融合。

・仙台発の世界的技術を地元の企業と積極的に連携推進、地域と共に発展する未来。

東北大学 工学研究科の安藤 康夫 教授と東北大学 医学系研究科の中里 信和 教授は、世界で初めてトンネル磁気抵抗(TMR)素子の作製に成功した東北大学 宮﨑 照宣 名誉教授と共に、「スピンセンシングファクトリー株式会社」(以下、SSF)を設立しました。そしてこの度、事業計画および将来性が評価され、東北大学の100%出資子会社である東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社(THVP)の運営するファンドから150百万円の出資を受け、本格始動します。

これまで、同発起人らは、東北大学が創立以来常に世界をリードしてきた磁石研究の技術を基に、世界で初めて室温で動作するTMR素子を作製し、これを用いた超高感度の磁気センサーを開発しました。このセンサーは、高い感度を維持したまま小型・軽量であることから、これまでは容易に受診することができなかった高度医療診断が「いつでも」「どこでも」受診できるようになる革新的なセンサーです。応用範囲は医療にとどまらず、簡易的に生体信号を測定するヘルスケア分野、さまざまな機械の動作状態を監視する機械産業分野、さらにはインフラの故障解析を容易にかつ客観的に実施する環境産業分野に至るまで、無限の可能性を秘めています。

SSFはセンサーによりもたらされる膨大な情報を人工知能制御することで、明るい未来社会に向けて貢献していきます。さらに、生産および製造を地元の中小企業と連携を図りながら推し進めることで東北大学が培ってきた技術を地元の産業界に還元し、地域を元気で生き生きとした社会とすることに貢献していきます。

<研究の背景>

東北大学 工学研究科のグループでは、磁石を使った電子デバイスを作製しています。ここに使われている技術はスピントロニクスと呼ばれており、世界中で盛んに研究が行われています。その中でも最も多くの研究者が携わり、かつ応用上重要なデバイスとしてTMR素子を挙げることができます。1994年に世界で初めてTMR素子の室温動作を実証したのは同グループであり、その後の特性改善により、TMR素子は高密度ハードディクスドライブ(HDD)において情報を読み出すセンサーとして、広く世の中で使われてきています。

このようにして徐々に感度が上がっていくと、将来的には非常に微弱な磁場信号である生体磁場が直接観測できるのではないかと考え、東北大学 医学系研究科と共同研究を2010年にスタートさせました。医学系研究科では大型で高価な磁気センサーを用いた診療に関して30年以上の実績を有し、世界でトップレベルの技術を有しています。医学系研究科では、室温で動作する小型の磁気センサーを熱望しており、この共同研究によって工学研究科のシーズと医学系研究科のニーズが合致することとなりました。

<開発の内容>

TMRセンサーはHDDにも使われている技術であることから分かるように、小型・軽量であるとともに量産化が可能な素子です。東北大学 工学研究科のグループはJSTのS-イノベプロジェクトのサポートもあり、このセンサーの高感度化に取り組み、世界に先駆けて心臓および脳からの磁場信号検出に成功することができました。これにより、小型・軽量でかつ超高感度なTMRセンサーを高度医療診断へ応用することが現実的となってきました。例えば体のどこかが不調と感じたとき、大病院に行かなくても非侵襲の診断で精密検査が可能となるなど、小型・軽量化は「いつでも」「どこでも」受診可能な社会を実現するということになります。また、磁場自身の特徴である高分解能性を積極的に利用すると、非侵襲検診による疾患の予知も夢ではありません。さらに、医療目的以外でも、非接触で生体内の生命活動をモニタすることができれば、センサーの応用範囲は格段に広がります。

一般に磁気センサーは図のように、世の中のさまざまな物理量を測定可能です。中でもTMRセンサーは(磁場の大きさでも感度でも)測定可能範囲が広く、現在使用されているほとんどの磁気センサーを置き換えることも可能です。そこでセンサーによりもたらされる膨大な情報を人工知能制御することで、脳科学などの先進的な研究への展開が期待されます。